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プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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林檎様より携帯サイト時に頂いたリクエストです。
現在連載しております。
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- 長く続く廊下の向こうからそれは聞こえてきた。
優しい歌。
世界で一番愛しい人の愛しい歌声。
しかしこれが自分に向けられているものではないと思うだけで、雑音に聞こえて心をイラつかせるのはなぜだろう。
フェリオは眉間にシワを寄せたまま、立ち止まっていたその場から来た道を戻って行った。
<その歌は天まで響く 1000hitリク by林檎様>
―それは2週間前の事。
この日、風はフェリオに連れられて小さな村に来ていた。
広い畑や田んぼの近くに点々と家があるが、そこは数えられる程に少ない家屋が並ぶ一角、といった方が正しい気がした。それほどに貧相な村。
「あ!フェリオ兄ちゃんだ!」
何度か訪れているのであろう、フェリオを見つけて男の子達が勢いよく突進してくる。
「元気にしていたか?」手荒く男の子達の頭を撫でた。
一足遅れて女の子達はフェリオの足下に走ってくると、「これ…お兄ちゃんに…」と一人の女の子が恥じらいながら一輪の花を高く上げた。
「ありがとう」
言葉と同時にニコッと笑うとフェリオは膝をついてその花を受け取ると胸の金具の隙間に挿した。
そんな微笑ましい光景に、風は隣で優しく微笑んで見ていた。
今までこの様な光景を何度見てきただろうか。
以前からの知り合いにしろ簡単に、まるで当然かの様に子供達と打ち解けてしまうフェリオは本当に素敵で。
「フウ、コイツらにお前の国の歌を聴かせてやってくれないか?」
「え?」
突然振り返りされたお願いに風は驚くが、「頼むよ」と顔の前で手を合わせられては断れない。風はくすっと笑って頷いた。
村の外れに村人がよく集会に使う小さな丘がある。
そこに子供達は風を中心に扇の形に並んで座った。全員が位置についた後、フェリオが一番右端に座る。
風はフェリオが座ったのを確認すると、体を正面に戻し胸に手を当てて、すぅっと息を吸った。
風の歌がそよ風に乗る。
なんて優しい声だろう。
その歌はとても暖かくて、聴いた者の心をそっと包み込む。
そんな歌声に子供達は息を飲んで聴いていた。
胸元にあった手を下ろして、風は子供達を見て微笑んだ。
「終わりです。」
一瞬の沈黙の後、子供達がわぁっと声を上げる。
「お姉ちゃんお歌上手ー!」
「うんっ!とってもキレイな歌だった!!」
「なぁなぁ、他にも何か歌ってくれよ。」
風は少し困りながら子供達にほほ笑んで、さり気なくフェリオに視線を送った。
それは風の助けを求める合図で。
―今日この村に来たのは風が歌う為だけではない。
セフィーロが平和になってしばらく経つが、なかなか魔物の数が減っていなかった。
特にこの村は他の街と違って柵や壁で囲まれていない為に魔物がよく畑を荒らしていた。ゆえに自給自足が困難となり、城からの視察隊が組まれたのだ。
フェリオはその対策の一つとして、『恐怖心の緩和』を最優先に考えた。
魔物を生み出す根本的原因。まずはそれを断つ。
特に子供は恐怖に敏感だ。自分のおかれている環境の変化を本能的に察知して、それが恐怖であればその想いは膨張していきやすい。
少しでも負の感情が鎮まればいいとフェリオは風に声をかけたのだ。
今まで仕事に関して話をされた事のない風にとってそれはとても嬉しくもあり、信頼に応えたいと本当に思った瞬間だった。
その役目の一つとして、まさか突然歌う事になるとはここに来るまで思いもよらなかったが、子供達の為に精一杯心を込めて歌った。
しかし、ただこのまま永遠と歌い続けてるにもいかない。
風も今回の視察隊の一員として加わったからには他の対策が立てる為に行動しなくてはならなかった。
もちろんフェリオはその事を理解していて、小さくため息をつくと隣りで風に甘えていた少年の頭にポン、と手をのせて覗き込みながら言った。
「お前達なぁ、フウが困ってるじゃないか。今日はこれで終わりだ。」
「なんだよーっ!フェリオ兄ちゃんはいつもお姉ちゃんの歌聞いてるんだろっ!?ずるいっ!!」
「ず、ずるいって言われても…―」
「お兄ちゃんのケチっ!!」
「「ケチーっ!!」」
気付くといつもは聞き分けのいい女の子達まで声を揃えてフェリオに「いーっ」と歯を見せている。
子供のこの団結力に、参ったな…とフェリオが頭を抱えた、その時だった。
「みんな、そろそろお昼ご飯の時間じゃないのかな?」
村の方から青年が一人、大きな何かを背負ってフェリオと風達に近付くと子供達に微笑んでいた。
「あぁ!テッちゃん!!」
子供達は一斉にその場を立ち上がるとその「テッちゃん」とやらに駆け寄り抱き付いた。
丘に残された二人は顔を見合わせてる。
年齢は風と変わりないか、それより年下に見える彼は短髪の赤毛で、服は地球でいう派手なアジアン風である。
その中でも特に印象強いのはやはり背負っているカバンだった。
風にはそれが洒落たギターケースにも見える。
すると子供達の高い声が二人の耳にも届いた。
「いつ帰ってきたんだ!?」
「ちょっと前にね。みんなも元気そうで何より♪」
「また演奏会してくれるの?」
「ああ、もちろん♪でもその前に、今は君達のオナカの方が演奏してるんじゃないのかな?」にっこりと笑う青年の声はとても優しい。
そういえば…と一人の男の子がお腹を押さえた。
「おなかすいたー!」
「お家帰ろー」
「うんっ!」
子供達はそれぞれおなかを押さえて顔を見合わせると、くるっと振り返ってフェリオと風に手を振った。
「バイバイっ!フェリオお兄ちゃんっ」
「お姉ちゃん、またお歌聞かせてね♪」
二人は頷いて手を振ると、子供達は可愛らしく走りながら村に戻っていった。
さて…、とフェリオは立ち上がって砂を払う。
「そろそろ行くか。」フェリオが風にそう声をかけて手を引いた。
青年は、遠目から子供達がそれぞれの家に入って行くまでしっかり見送ると、二人に視線を向ける。
「ありがとう。助かったよ。」
フェリオの感謝の言葉に彼は「どういたしまして。」と笑顔を作ると、隣りで小さく一礼をする風に視線を向けた。
「……」
それから風の側に歩み寄ると、その青くて大きな瞳でじっと見つめる。
「…あの…なにか?」
少し戸惑う風の髪にそっと触れ、そよ風に乗って付いたであろう落ち葉を取ると先程の笑顔とは少し違う、どこか喜びを含んだ笑顔でつぶやいた。
「…決まり、かな。」
「え…―」
「初めまして、可愛らしい歌姫♪」
彼は言葉と同時に片膝をついて風に頭を下げる。
「俺はテツ。貴方の力を貸してほしい。このセフィーロの為に。」
2へ続く
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