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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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タイトル程、甘くない内容ですが、
書き方を少し変えてみたりして楽しみました。

ホントは冬に大方出来ていたので、内容が若干冬っぽいです。



それはとても優しい、目を細めた笑顔。
そっと開かれた瞼から覗く琥珀色の瞳は、わずかに妖しく光り、再度つむられた。
そして伝わってきたのは柔らかだけど、どこか力強い唇の感覚と、甘い香りと甘い味。





恋するキャンディー







いつものようにセフィーロへ着いた後、風はフェリオに連れられてセフィーロ城にある書庫に来ていた。
フェリオが仕事に必要な資料を探しに来たのもあるが、以前に風がセフィーロの歴史を知りたいと言ったのを覚えていた彼の計らいでもあった。

セフィーロで唯一の書庫。
室内は高い天井にまでつく本棚に様々な色や形の本がびっしりと納まっている。
その部屋のほぼ中央に1畳ほどの机と椅子が4つ。


分厚い書籍を読んでいる途中、不意にフェリオがコン、コン、と咳こんだ。
「風邪…ですか?」
「ん、いや、大丈夫。」
「…無理はいけないですわ。」
「ありがとう。でも本当に平気なんだ。少し乾燥しているからじゃないかな。」
喉仏を挟むような仕草をして、もう一度咳払いをする。

室内は定期的に掃除がされているので、埃っぽいわけではないが、ここは他の部屋に比べて少し乾燥しているようだ。
「それでしたらこれを…」
風がスカートのポケットから小さな包みを取り出した。
「? それは?」
「飴です。」
「アメ?」
「甘いお菓子の一種ですわ。」
包み紙の両端をひねると中からピンク色の丸い飴玉が顔をみせる。
風は包み紙に飴を乗せたまま手の上に置いて、「どうぞ。」とフェリオに差し出した。
「ありがとう。…うん、美味しい。」ふんわりと優しい甘さがフェリオの喉を潤した。
「よかった。お部屋に戻ったらお茶にしましょうね。」
「ああ。」
フェリオは嬉しそうに笑って、それから風の肩を抱いた。





けれど、そのあとクレフからの急な呼び出しがあり、フェリオは城外の街へ出掛ける事になってしまった。
「夕方には戻る。」
残念そうにする風に声をかけてぎゅっと抱きしめると、フェリオは精獣に乗り、御付きの者数名と城を出ていく。
その後ろ姿が見えなくなるまで見送って、風は小さくため息をついた。それでも、気持ちはすぐに前を向いた。
-帰るまでに、もう一度彼に会える事を信じて…



しかし結局、夕方になってもフェリオは戻る事はなく、二人でお茶をする約束も叶わずに、風は東京へ帰還したのだった。



東京に戻り、光と海とも別れて自宅へ帰った風は自室の扉を開けて鞄を所定の場所へ置く。

―フェリオ…

無意識に出た大きなため息。それが思ったより大きく、声に近くて驚き、慌てて手で口を押さえた。


「仕方がない、ですわね。」

風はそう自分に言い聞かせるように呟くと首を左右に振り、部屋着に着替える為に、ふとポケットに手を入れた。
するとカサッと指に何かが触れる。風はなんだろう、とそれを取り出して息を飲んだ。


手のひらには一つの飴と、一枚の小さな紙きれ。

「これは…」
今朝、セフィーロに行く前に光と海に一つずつ飴を渡した。そして昼間には書庫で咳をしていたフェリオに。

フェリオが飴を口に入れた後、手の上に残った包装紙を知らぬ間に自分のポケットに戻していたのだろう。
その少し皺になった包み紙を見つめながら、飴を食べた時のフェリオを思い出した。

美味しい、と笑った顔は可愛いと思うほど無邪気な笑顔で、こちらまでつられて笑顔になってしまったほど。

彼の一国の王子としての仕事を風は詳しく知らない。
セフィーロは寸前で崩壊を免れた国。まだまだ未完成でやるべき事は山ほどあるのだ。
それでもフェリオは週に一度、自分が訪れる日曜日に時間を作ってくれている。


風は手のひらにある未開封の包みの飴を開けた。
コロン、と転がったピンク色の飴玉。それをそっと指で挟んで口に入れた。
「…美味しい。」頬が緩み、自然と感想がこぼれ笑顔になった。

なぜだろう。口の中に広がる甘さが、先程までの悲しみを掻き消していく。貴方の笑顔が私に喜びを与えるかのように。

会えない悲しみはあるけれど、その時間の分だけフェリオの事を考えられる。
そしてそれは彼も同じなのだと、毎回異なる逢瀬の場所が教えてくれるのだ。
今日は念願の書庫だった。
その厚意がとても嬉しい。

風は手の中にある二つの飴の包み紙を見て、自然と笑顔になった。


来週はもう少し、持って行こう。
そしてそれをお揃いの小瓶に詰めて、
一つはあなたの部屋に、
一つは私の部屋に。


fin
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