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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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2008,12,12 風ちゃん誕生日記念ss






「あ、あのっ、僕と踊ってくれませんか!?」
赤い顔で瞼をぎゅっと閉じ、そう叫ぶように声を出した青年を前に風は頭を下げた。

「ごめんなさい。」

残念そうに去っていく青年の後ろ姿に心の中でもう一度謝ると、視線を煌びやかな会場に戻し、まだ来ぬ愛しい人を待った。





普段は街の片隅でひっそりとしていて、目立たないその施設は、年に何度か行われるダンスパーティの時のみ華やかになる。
その会場の入り口に風はいた。
シンプルな淡い緑のワンピースドレス姿の風は、胸元をシルク生地のストールで品よく隠している。
その姿はパーティ会場前で、それは決して目立つ格好ではないが、清楚な存在感は強く、本人が思っている以上に注目を浴びていた。



その後何人か、同じ様に声をかけられ、全て同じ言葉で断った風。
今まで声をかけてきた紳士はなかなか粘り強くて、何度も首を横に振り、やっと去ってくれた。
何度も断るうちに、風はなんだか妙な罪悪感を抱いてしまい、ため息をくと、ふと腕時計を見た。
セフィーロの時を刻むそれは、すでにパーティ開始まで5分を切っている事を伝えている。
さすがの風も焦りを感じ始めた。

―…何かあったのかもしれない。
一度城に戻ろう、と思ったその時…



「フウ!」


振り返るとそこには正装姿だというのも気にせずに、フェリオが全速力で走ってきた。
「ごめん、遅くなって…」
「いいえ。」ほっと息をつく風。
安心して熱いものがこみ上げる気持ちをぐっと抑え、にっこりと微笑んだ。

「なぁ今、誰かいなかったか?」
「え…ええ、ダンスのお誘いを受けましたわ。」

苦笑いをする風に、やっぱり…、とため息をつき、フェリオは額に手を当てる。
「ごめん、城で待ち合わせた方がよかったかな。」


― たまには外で待ち合わせたデートをしてみたい。

そう以前に風が言った事を覚えていたフェリオが、このパーティーの招待状を手に入れたのは一週間前の事。
そしてフェリオはそれに手書きながらも詳しい地図を添え、風に渡した。
ホント律儀ねぇ、と近くにいた海の声が聞こえたが、受け取った本人が嬉しそうにしていたから、フェリオはさらりと聞き流した。

けれど、当日になって急な会議が入り、待ち合わせ時間に遅れる事態となってしまったのだ。

待たせた時間と風の容姿から考えて誘われたのは先刻の男だけではないだろう。
それに今日はダンスパーティ。パートナーを求める者も多い。
あまりに落胆するフェリオに風はくすくすっと笑った。
「では、次はお部屋で待ち合わせしましょう。」

違和感なく出たその言葉にフェリオは一瞬驚いた顔をして、すぐに「そうだな」と笑顔で答える。
「待たせないように気をつけるよ。今度は。」
語尾に若干思いを込めてフェリオが言うと、それが伝わったのか、風はかあぁっと赤くなった。

― 次、がある。
風は無意識にこれからも傍にいる事を伝えてしまったのだ。
フェリオが嬉しそうに笑う傍らで、風は自分の安易な発言に反省した。―その時。



カラン… カラン…


パーティを知らせる鐘が鳴る。
荘厳な音色が辺りを包んだ。


「時間だな。」
フェリオはコホン、と咳払いをすると左手を胸に、右手を風の前に差し出した。

「それでは参りましょうか、姫君。」

フェリオは風と同じ目線でニッと笑い、小さくウィンクをする。
きょとんとした風だが、すぐにくすっと笑って返事をした。

「はい、王子様。」

ほんのり頬を赤くしながらも、風はフェリオに手を重ねると、フェリオはその手を自分の顔の前へ引いた。

「待っていてくれて、ありがとう。」

外気で少し冷えた風の指先に、フェリオは優しく口づけを落とす。


―ありがとう。
その一言で先程までの不安がすべて幸せに変わってしまうのだから、自分は単純だ。と風は自重した。


会場の方が次第に賑やかになり始め、微かに音楽も聞こえてきた。


「さあ、行こう。」

無邪気に笑うのフェリオに風もつられて笑顔になる。

「はいっ。」

瞬く満天の星空の下、風はフェリオに手を引かれ、会場へ向かった。



END
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