PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
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プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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青い空。
白い入道雲。
照りつける真っ赤な太陽。
今年も熱い夏が来た。
「ぷっはぁぁ~~っ!きっもちいぃ~ぜっ!」
ざばぁっと、青く透き通る塩水の中から顔を出したのは、目にゴーグルを付けた少年だ。
ゴーグルを額に上げて、高い空を見上げると、そのまま身体を波に預けて、フワフワと浮いてみせた。こんがりと焼けた肌が水の中で揺れる。
「やっぱ海は最高だ!」
ばっと立ち上がり、ゴーグルを元の目の位置に戻すと、彼は沖に向かって勢いよく泳いでいった。
「あっづ~~~・・・」
そんな彼から離れる事、約200m。砂浜の上の、小さな個人パラソルの下にあるリクライニングチェアの上で、Tシャツに海パンの少年が一人、暑さと人の多さに、へばって横になっていた。
パラソルの影になっているにも関わらず、目元にはさっきの彼のゴーグルとは対照的なサングラスが掛けられていた。
「これじゃあ、砂漠にいるのとおんなじだな・・・-」
「だったら、太一さんのとこに行ってくればいいのに。」
突然横から声をかけて来た少年を黒いフィルターの先に見て身体を起こす。
「タケル」
「水、冷たくて気持ちいよ?」
自分と同じ金髪で短髪の彼がにっこりと笑顔を作って見下ろしていた。
「そうですよ。せっかく江ノ島に来たんだから、泳がなくちゃ損です。ヤマトさん」
タケルの後ろからピョコッと顔を出す少女、ヒカリは、ヤマトの姿を見て、くすくす、と笑う。胸には大きなビーチボールが抱えて。
すると、あ、と思いついたようにヒカリは続けた。
「もしかして、海、嫌いでした?」
少し心配そうに言うヒカリに隣りでタケルが、ちがう、ちがう、手のひらをヒカリに向かって振って笑う。
そしてヤマトには聞こえない様、ヒカリに顔を寄せて小さな声で言った。
「太一さんが自分を放って海に入っちゃったから、すねてるんだよ。」
ああ、なるほど。と、ヒカリもつられて、くすくすと笑う。
そんな二人の姿をヤマトはサングラスをずらして上目遣いで見た。
・・・本当にこの二人は仲がいいな。
自分が話題にされているとはつゆ知らず、そんな事を思っていたのん気なヤマトだった。
―昨日の夜、タケルが珍しく泊まりに来た。
親父も早めに仕事を切り上げ、夕食を囲んでとっていた時の事だ。
「明日、ヒカリちゃんと江ノ島に行くんだ~♪」
タケルはニコニコ笑って、前に並ぶ父と兄に言った。父は箸を止めて眉を潜める。
「…大丈夫なのか?中学生二人でそんな遠い所行って」
少し予想していた父の言葉に苦笑いをしてタケルが答えた。
「やっぱり危ない?じゃあお父さん連れてってよ」
「うーん…行ってやりたいんだが、明日は特番の撮影があってなぁ…。おい、ヤマト、もう夏休みだろ。俺の代わりに行ってやれ」
ヤマトは明日の予定を思い返して、沈黙する。しばらくして、素直に、わかった。と頷いた。
・・・タケル様の為なら仕方がない。
しかし、3人という事は、タケルとヒカリにとって、自分は保護者か、はたまたお邪魔虫と言った状況に陥ってしまうのではないか、と思い、ヤマトは少し苦い顔をした。
そんなヤマトの心情を察してか否か、突然タケルがポンと手を叩いた。
「お兄ちゃん一人でじゃ、つまらないだろうから、太一さんにも来てもらおうよ!」
タケルの提案に、口にした水を吐き出しそうになり、手で押さえて飲み込み、言った。
「はぁ?なんでそこで太一が…―」
<トゥルル。トゥルル。>
と、ヤマトの言葉を遮る様に携帯が鳴り、ヤマトは乱暴に取った。
何も言わずに耳をあてて、ああ、と間をあけて二度言い、電話を切ると、はぁとため息をつき、食事を続ける。そんなヤマトを見て、父がぼそっと言った。
「ヤマト、誰にでもそういう態度を取るのは、良くないぞ」
何言ってんの、とタケルが父を笑う。
「違うよ、お父さん。今のは太一さんだよ」
「え?だって誰からか確認せずに…」
「着信音、違うじゃん。」
さらりと言われ、父は驚いて身を乗り出した。
「…そう・・・なのか?」
「もう、お父さん、お兄ちゃんと一緒に暮らしてるのに、知らない訳?」
タケルに毒突かれて、父は、ははっと苦笑いをした。
そんな二人の会話に、あえて突っ込まず、黙々と食事をする兄に、タケルが視線を向けた。
「太一さん、来るって?」
「・・・ああ」
素っ気なく答える実兄に、タケルは素直じゃないなぁ、と心の中で笑ったのだった。
タケルとヒカリは膝下くらいまで海水に浸かり、ビーチボールでパスをしあいながら遊んでいる。
ふと、ヒカリが頬を膨らませて言った。
「もうっ。これじゃあ、江ノ島にきた意味、ないじゃない。」
少し強く投げられたボールを胸で受け取って、タケルが、頭を掻き、あはは・・・と苦く笑った。
「ほんと、頑固な兄でスミマセン・・・」
タケルが言葉と同時に優しく投げたボールを、ヒカリはそっと取り、まったくだわ、と、ため息をついてと片手を腰にあてた。
そして、未だ遠くの砂浜で、自ら作った日陰の中で横になっているヤマトをヒカリは見た。
・・・というより、睨んだ。
実はこれはヒカリとタケルの作戦だった。
タケルはヒカリから、兄が元気ないと暗い表情で相談を受けた。
ヒカリの証言から推理してみると、どうやら、我らが尊敬する兄上達が、別の進学と、それぞれの趣味、サッカーとバンドで会うどころか、連絡をも取っていない事が原因の様だ。
太一はスポーツ推薦で現在の高校に入学した為、ほぼ毎日サッカー漬けで、妹曰く、フラフラになって帰宅したと思うと、すぐにベッドで眠りについてしまう。
実の妹のヒカリとも、最近満足に会話をしていない。
一方のヤマトはというと、自宅で作詞活動など、比較的太一より自由な時間があるものの、あの性格だ。自ら進んで電話をかけるなど、滅多なことがない限り、するわけがない。
意味のないメールなど、もっての他だ。
連絡したくても出来ない状況下にいる太一。
連絡しようとしない性格上問題ありのヤマト。
まったく、本当にいつになっても世話の焼ける兄達だ。
こうなったら、自分達のデートついでに誘ってみようか、という彼らに対する二人の計らいだったのだ。
「・・・ずるいわよ。ヤマトさんは」
ボールを抱えたまま、投げ返さないヒカリに、そっと近づいたタケルは、兄を睨んでいるヒカリの瞳が少し悲しそうなのに気が付いた。
・・・もしかしたら、ヒカリがこの話に賛成したのは、彼らの為だけではなかったのかもしれない。
太一とろくに会話をしていないのはヒカリも同じだった。大好きな兄は、白と黒の丸い球に夢中で、部屋中に飾ってある有名選手のポスターやサインの入ったユニフォームを見るたび、切り刻んでしまいたくなる。
・・・なんて醜い心なんだろう。
その心を隠したくて、たまにある太一との少ない会話は素っ気無いものになってしまっていた。
そして、兄の時々みせる親友への寂しさを背負った背中に、ヒカリは耐え切れず、タケルに相談したのだった。
「ヒカリちゃん?」
タケルの声に、はっと気づき、視線をタケルに戻した。
タケルはボールをヒカリからそっと取って、ヒカリに優しく微笑んだ。
「来た意味ない、とか言わないでよ。」
え?と、呟くと、タケルは手にあるボールを両手で頭の上に乗せて、目線を外し、頬を少し赤くして言った。
「ボクはヒカリちゃんと海に来れて、嬉しいんだからさ。」
そんなタケルの言葉に驚いてヒカリは同じように頬を赤くして照れた。
でも、今のタケルの格好を見つめると、かつてパートナーを頭の上で連れていた時の様だなと思い、ヒカリはくすりと笑って、そうね、と答えた。
「私もタケルくんと来れて嬉しい」
夏の暑さとは別の熱を心の奥で感じる。
その暑さを優しく和らげてくれる足元の水の冷たさが、二人にはとても気持ちがよかった。
「ヤーマト!」
突然、直射日光を遮断していたサングラスを、いきなり外されて、閉じていた瞼をゆっくり開けた。太陽の光で目が痛い。
その光を太一がすっと遮ってヤマトを見下ろした。
「そんなとこで寝てると襲われるぞ♪」
冗談ぽく笑う太一にヤマトはムッと睨んだ。
「…寝てねぇよ。」
膨れっ面のヤマトに顔を寄せて、太一がにこっと笑う。
「なな、入ろうぜ、海。」
「さっき、もう泳いだじゃないか」
両手を腰に当てて、はぁと息を吐いて「あれはー、ただのトレーニング。」と言った。
こんなとこまで来て、トレーニングかよ・・・。と心で思いつつ、ヤマトは口に出さなかった。
それは、自分はサッカーをしている太一が一番好きだから。
ヤマトの返事を待つことなく、太一がヤマトの腕をぐいっと引き、身体を起こした。さらっと金髪が揺れる。少し見上げた位置にある太一の顔が、へへっと無邪気に笑う。
「んで、これからがヤマトと遊ぶ時間だよ♪」
ヤマトは驚いた。
一つは、思いもしない太一の言葉。
もう一つは、怒ってやろうと思っていた自分の思いが、全部吹き飛んでしまった事に。
変わりに出て来たのは小さな笑いと、ヤマトらしからぬ素直な言葉だった。
「ばぁか。遅いんだよ。」
ニッと笑うヤマトの手を太一は、すかさず、ぎゅっと握った。
「行こうぜっ!」
ヤマトの手を引いて走る太一。砂を蹴飛ばして、慣れない砂浜を走る。
しばらくすると、パシャッと足下で水が跳ねて、ヤマトの熱い体に触れた。
まるで氷水のようだ、と少し身体を震わせながら、海に入っていく。
そして、繋がれた手が水の中に入り、更にぎゅっと強く握られた。
そんな二人の姿をタケルが見つける。くすっと笑い、ヒカリの背後を、指差した。振り返り、遥か向こうに見える兄達に、ヒカリもくすりと笑う。
まだまだ、夏は始まったばかりだ。
fin
ざばぁっと、青く透き通る塩水の中から顔を出したのは、目にゴーグルを付けた少年だ。
ゴーグルを額に上げて、高い空を見上げると、そのまま身体を波に預けて、フワフワと浮いてみせた。こんがりと焼けた肌が水の中で揺れる。
「やっぱ海は最高だ!」
ばっと立ち上がり、ゴーグルを元の目の位置に戻すと、彼は沖に向かって勢いよく泳いでいった。
「あっづ~~~・・・」
そんな彼から離れる事、約200m。砂浜の上の、小さな個人パラソルの下にあるリクライニングチェアの上で、Tシャツに海パンの少年が一人、暑さと人の多さに、へばって横になっていた。
パラソルの影になっているにも関わらず、目元にはさっきの彼のゴーグルとは対照的なサングラスが掛けられていた。
「これじゃあ、砂漠にいるのとおんなじだな・・・-」
「だったら、太一さんのとこに行ってくればいいのに。」
突然横から声をかけて来た少年を黒いフィルターの先に見て身体を起こす。
「タケル」
「水、冷たくて気持ちいよ?」
自分と同じ金髪で短髪の彼がにっこりと笑顔を作って見下ろしていた。
「そうですよ。せっかく江ノ島に来たんだから、泳がなくちゃ損です。ヤマトさん」
タケルの後ろからピョコッと顔を出す少女、ヒカリは、ヤマトの姿を見て、くすくす、と笑う。胸には大きなビーチボールが抱えて。
すると、あ、と思いついたようにヒカリは続けた。
「もしかして、海、嫌いでした?」
少し心配そうに言うヒカリに隣りでタケルが、ちがう、ちがう、手のひらをヒカリに向かって振って笑う。
そしてヤマトには聞こえない様、ヒカリに顔を寄せて小さな声で言った。
「太一さんが自分を放って海に入っちゃったから、すねてるんだよ。」
ああ、なるほど。と、ヒカリもつられて、くすくすと笑う。
そんな二人の姿をヤマトはサングラスをずらして上目遣いで見た。
・・・本当にこの二人は仲がいいな。
自分が話題にされているとはつゆ知らず、そんな事を思っていたのん気なヤマトだった。
―昨日の夜、タケルが珍しく泊まりに来た。
親父も早めに仕事を切り上げ、夕食を囲んでとっていた時の事だ。
「明日、ヒカリちゃんと江ノ島に行くんだ~♪」
タケルはニコニコ笑って、前に並ぶ父と兄に言った。父は箸を止めて眉を潜める。
「…大丈夫なのか?中学生二人でそんな遠い所行って」
少し予想していた父の言葉に苦笑いをしてタケルが答えた。
「やっぱり危ない?じゃあお父さん連れてってよ」
「うーん…行ってやりたいんだが、明日は特番の撮影があってなぁ…。おい、ヤマト、もう夏休みだろ。俺の代わりに行ってやれ」
ヤマトは明日の予定を思い返して、沈黙する。しばらくして、素直に、わかった。と頷いた。
・・・タケル様の為なら仕方がない。
しかし、3人という事は、タケルとヒカリにとって、自分は保護者か、はたまたお邪魔虫と言った状況に陥ってしまうのではないか、と思い、ヤマトは少し苦い顔をした。
そんなヤマトの心情を察してか否か、突然タケルがポンと手を叩いた。
「お兄ちゃん一人でじゃ、つまらないだろうから、太一さんにも来てもらおうよ!」
タケルの提案に、口にした水を吐き出しそうになり、手で押さえて飲み込み、言った。
「はぁ?なんでそこで太一が…―」
<トゥルル。トゥルル。>
と、ヤマトの言葉を遮る様に携帯が鳴り、ヤマトは乱暴に取った。
何も言わずに耳をあてて、ああ、と間をあけて二度言い、電話を切ると、はぁとため息をつき、食事を続ける。そんなヤマトを見て、父がぼそっと言った。
「ヤマト、誰にでもそういう態度を取るのは、良くないぞ」
何言ってんの、とタケルが父を笑う。
「違うよ、お父さん。今のは太一さんだよ」
「え?だって誰からか確認せずに…」
「着信音、違うじゃん。」
さらりと言われ、父は驚いて身を乗り出した。
「…そう・・・なのか?」
「もう、お父さん、お兄ちゃんと一緒に暮らしてるのに、知らない訳?」
タケルに毒突かれて、父は、ははっと苦笑いをした。
そんな二人の会話に、あえて突っ込まず、黙々と食事をする兄に、タケルが視線を向けた。
「太一さん、来るって?」
「・・・ああ」
素っ気なく答える実兄に、タケルは素直じゃないなぁ、と心の中で笑ったのだった。
タケルとヒカリは膝下くらいまで海水に浸かり、ビーチボールでパスをしあいながら遊んでいる。
ふと、ヒカリが頬を膨らませて言った。
「もうっ。これじゃあ、江ノ島にきた意味、ないじゃない。」
少し強く投げられたボールを胸で受け取って、タケルが、頭を掻き、あはは・・・と苦く笑った。
「ほんと、頑固な兄でスミマセン・・・」
タケルが言葉と同時に優しく投げたボールを、ヒカリはそっと取り、まったくだわ、と、ため息をついてと片手を腰にあてた。
そして、未だ遠くの砂浜で、自ら作った日陰の中で横になっているヤマトをヒカリは見た。
・・・というより、睨んだ。
実はこれはヒカリとタケルの作戦だった。
タケルはヒカリから、兄が元気ないと暗い表情で相談を受けた。
ヒカリの証言から推理してみると、どうやら、我らが尊敬する兄上達が、別の進学と、それぞれの趣味、サッカーとバンドで会うどころか、連絡をも取っていない事が原因の様だ。
太一はスポーツ推薦で現在の高校に入学した為、ほぼ毎日サッカー漬けで、妹曰く、フラフラになって帰宅したと思うと、すぐにベッドで眠りについてしまう。
実の妹のヒカリとも、最近満足に会話をしていない。
一方のヤマトはというと、自宅で作詞活動など、比較的太一より自由な時間があるものの、あの性格だ。自ら進んで電話をかけるなど、滅多なことがない限り、するわけがない。
意味のないメールなど、もっての他だ。
連絡したくても出来ない状況下にいる太一。
連絡しようとしない性格上問題ありのヤマト。
まったく、本当にいつになっても世話の焼ける兄達だ。
こうなったら、自分達のデートついでに誘ってみようか、という彼らに対する二人の計らいだったのだ。
「・・・ずるいわよ。ヤマトさんは」
ボールを抱えたまま、投げ返さないヒカリに、そっと近づいたタケルは、兄を睨んでいるヒカリの瞳が少し悲しそうなのに気が付いた。
・・・もしかしたら、ヒカリがこの話に賛成したのは、彼らの為だけではなかったのかもしれない。
太一とろくに会話をしていないのはヒカリも同じだった。大好きな兄は、白と黒の丸い球に夢中で、部屋中に飾ってある有名選手のポスターやサインの入ったユニフォームを見るたび、切り刻んでしまいたくなる。
・・・なんて醜い心なんだろう。
その心を隠したくて、たまにある太一との少ない会話は素っ気無いものになってしまっていた。
そして、兄の時々みせる親友への寂しさを背負った背中に、ヒカリは耐え切れず、タケルに相談したのだった。
「ヒカリちゃん?」
タケルの声に、はっと気づき、視線をタケルに戻した。
タケルはボールをヒカリからそっと取って、ヒカリに優しく微笑んだ。
「来た意味ない、とか言わないでよ。」
え?と、呟くと、タケルは手にあるボールを両手で頭の上に乗せて、目線を外し、頬を少し赤くして言った。
「ボクはヒカリちゃんと海に来れて、嬉しいんだからさ。」
そんなタケルの言葉に驚いてヒカリは同じように頬を赤くして照れた。
でも、今のタケルの格好を見つめると、かつてパートナーを頭の上で連れていた時の様だなと思い、ヒカリはくすりと笑って、そうね、と答えた。
「私もタケルくんと来れて嬉しい」
夏の暑さとは別の熱を心の奥で感じる。
その暑さを優しく和らげてくれる足元の水の冷たさが、二人にはとても気持ちがよかった。
「ヤーマト!」
突然、直射日光を遮断していたサングラスを、いきなり外されて、閉じていた瞼をゆっくり開けた。太陽の光で目が痛い。
その光を太一がすっと遮ってヤマトを見下ろした。
「そんなとこで寝てると襲われるぞ♪」
冗談ぽく笑う太一にヤマトはムッと睨んだ。
「…寝てねぇよ。」
膨れっ面のヤマトに顔を寄せて、太一がにこっと笑う。
「なな、入ろうぜ、海。」
「さっき、もう泳いだじゃないか」
両手を腰に当てて、はぁと息を吐いて「あれはー、ただのトレーニング。」と言った。
こんなとこまで来て、トレーニングかよ・・・。と心で思いつつ、ヤマトは口に出さなかった。
それは、自分はサッカーをしている太一が一番好きだから。
ヤマトの返事を待つことなく、太一がヤマトの腕をぐいっと引き、身体を起こした。さらっと金髪が揺れる。少し見上げた位置にある太一の顔が、へへっと無邪気に笑う。
「んで、これからがヤマトと遊ぶ時間だよ♪」
ヤマトは驚いた。
一つは、思いもしない太一の言葉。
もう一つは、怒ってやろうと思っていた自分の思いが、全部吹き飛んでしまった事に。
変わりに出て来たのは小さな笑いと、ヤマトらしからぬ素直な言葉だった。
「ばぁか。遅いんだよ。」
ニッと笑うヤマトの手を太一は、すかさず、ぎゅっと握った。
「行こうぜっ!」
ヤマトの手を引いて走る太一。砂を蹴飛ばして、慣れない砂浜を走る。
しばらくすると、パシャッと足下で水が跳ねて、ヤマトの熱い体に触れた。
まるで氷水のようだ、と少し身体を震わせながら、海に入っていく。
そして、繋がれた手が水の中に入り、更にぎゅっと強く握られた。
そんな二人の姿をタケルが見つける。くすっと笑い、ヒカリの背後を、指差した。振り返り、遥か向こうに見える兄達に、ヒカリもくすりと笑う。
まだまだ、夏は始まったばかりだ。
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