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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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4月1日の企画物



春休みも中頃。


私立高校に通うヤマトは、先日無事3年生への進級が決まった。
最近バンド活動やお彼岸で田舎に帰ったりと忙しかった彼の本日の予定にタイトルをつけるならば「家でゴロゴロ」
寝間着から部屋着に着替えているものの、部屋は程よく散らかっている。
そんな中でリビングのソファーに座って好きな音楽を聴きながら雑誌を読んだり、時折テレビをつけたり、ベランダから外を眺めたりしていた。

「…平和だなぁ…」そんな自然と零れる独り言。
こんな時はひどく昔の事を思い出す。あの世界の事とか、今は会えないパートナーの事とか。

……それと…


―ピンポーン―

玄関のチャイムが鳴る。

重い腰を上げて玄関の扉を開けると、そこに立っていた人物を見てヤマトは吹き出してしまった。
「?……なんだよ?」
首を傾げ眉間にシワを寄せてヤマトを見る彼の名は八神太一。
「いや、別に。」
まさか今さっき頭に浮かんだ顔を持つ人物がタイミングよく現れた、なんて事は口にせず、ヤマトは声を潜めてしばらく笑い続けた。
「・・・・・・変な奴。」
そう言うと太一は自分の頭をぐしゃぐしゃっと掻いて少し俯いた。

ひとしきり笑ったヤマトは、ふと太一の違和感を感じた。
右肩に掛けられたスポーツバックはサッカーの時に使っているドラム管型よりはるかに大きくて、そのカバンには少しあわない自分とは違う制服姿。春休みの真っ直中だというのに、だ。
それに一番強い違和感。

太一の笑顔が…ない。

「何だ?春休み終わるまで泊まってく気か?」
その違和感を吹き飛ばす様に、ヤマトは普段は言わない様な冗談を言ってみる。
しかしそれでも太一は返事をせずに、小さく首を振った。

「ヤマト。俺…―」
太一の口が重く動いた。




「留学する事になった。」






あまりに突然の衝撃的な言葉にヤマトは驚いてその場で固まった。
「留…学…?」
なんとか出て来た言葉は太一の台詞を繰り返すもので。
太一は「うん。」と小さく頷く。その視線は地面に向けられたまま・・・。


「そう・・・か…」
―…早かれ遅かれ、いつかその言葉を聞かされるとは思っていた。
太一が行った学校はサッカーの名門で…その中でもレギュラーでエースストライカーとして八神太一の名は世間を騒がしている。ファンも多い。

改めて俯いた太一をみると、さっきまで妙だと感じていた姿は、今はもう、彼の旅立ちを意味しているものにしか見えなくなっていた。

「それで、その格好と荷物か?」
「…ごめん、ずっと言おうと思ってたんだけど…言えなくて…。今から、行ってくる。」
そういう太一の顔は未だに下を向いている。
「…ああ。」
仕方がない。太一の夢の為に笑顔で見送ろう、とヤマトは決心した。

その時―

「ヤマト」
太一が懐から何かを出してヤマトに突き出した。

「…なんだよ…これ……」
目の前に出されたそれにヤマトは息をのんだ。
太一が差し出したモノ、その形は紛れもなくチケットだった。

「ヤマトの分だ。…一緒に行かないか?」

心臓の音がドクンと響く。今日初めてしっかりと太一の瞳をヤマトが見つめた瞬間だった。
ヤマトは驚きすぎて声も出ないでいる。そんなヤマトを太一は真剣に、ただじっと見つめて、変わらず二人の間のチケットを所有している。


少しして、ヤマトは腕を組んで大きくため息をついた。
「太一…―」
「俺が行くのはフランスなんだ。ヤマトのじいさん、住んでるだろ?だから、来られない事はないんじゃないか。」
ヤマトのそんな仕草が自分を諭すものだと感じた太一はすかさずヤマトの言葉を遮った。その思いが伝わったのか、ヤマトは冷静に努めてもう一度彼の名を呼んだ。

「太一…問題はそこじゃないだろ。」
問題なのは住家じゃない。
もっと大きな事。言うなれば…、存在。

「お前は俺の人生をなんだと思ってんだ?…着いて行くって事は学校を辞めるって事だろーが。…それに親父やタケルをどう説得して…―」
「それでも俺は、ヤマトを連れて行きたい。」
「太一っ!!」
怒鳴ったものの、ヤマトの心の奥深くでは太一の行動に嬉しく思う自分がいるのに気付いている。だからこそ困っているのだ。
「一緒に行こうぜ、ヤマト。」さらに押してくる太一の言葉にヤマトの心は揺らいだ。
・・・本当に行き当たりばったりで、後先考えずに自分の意見を押し通していく。そしてそれは結局周りを巻き込む結果となってしまう。これが昔からの太一の短所。
こんな短所を持つ彼を見つけて、そればかりか今はもう受け入れてしまったヤマトの答え。

一度瞳を閉じて顔に片手を当てたヤマトは太一の手にあるチケットを取って言う。
「わかった。」
「ホントか!?」
「ああ。お前に着いて行ってやるよ。」
太一の顔から緊張の色が消えていつもの太陽の様な笑顔に変わった。
「ありがとう!ヤマト!!お前の愛、確かに受け取った!!」

すると太一は靴を脱いで玄関に上がり、ぎゅっとヤマトを抱きしめた。
「あ、ああ…」と照れながらもヤマトが小さく頷いて太一の背中に手を回す。
これからいろいろと大変だろうけど、二人でなら何でも出来る気がする。幼かった時のあの奇跡の様な事がまた。それが太一の夢でもいいと思えた。彼の夢が自分の夢だと言える。そんな日がきっと近い、ヤマトはそう感じていた。





「安心したら腹減ったぜ~。ヤマト、昼メシの残りとかあるか?」
太一はすぐに体を引いてヤマトの両肩に手を置いて言った一言にヤマトは「え?」と太一を見つめた。

「あ、あるけど…」
「やりぃっ!!おっじゃましぁ~す!」
太一はきょとんとしたヤマトの横をすり抜けてリビングに入っていった。

「た…たいち?」
状況が把握出来ずにチケットを握ったまま、その場に立ち尽くしているヤマト。
「ん~?」
「なあ…これから行くん…だろ?…フランス。」

その言葉に太一はキッチンから廊下を覗いて首を傾げるヤマトをみてニヤニヤと笑っている。そして人差し指を横に振りながらリズムをつけてこう言う。
「なぁヤマト、今日は何の日だ~?」

は?とヤマトは玄関のカレンダーをみて、それからすぐに「ああー!!」と声を上げた。




4月1日
誰もが知る一年で一度のウソをつく事が許される日。

太一の今日の前後のあまりにも違う態度の意味がわかってヤマトのこめかみに青筋が立った。
「太一っ!!」
ばっとその名の人物をみると、彼はひょいっと首を引っ込める。
その行動にイラッとしたのと同時にヤマトは物凄い勢いで太一に近づいて胸ぐらを掴んだ。
「お前っ!よくもやりやがったな!!」
「そんなに怒るなって~」
ドウドウ…と両手を顔の前に上げている太一は、まるで怒られるのを覚悟していた様子。

そう、太一の「留学」はエイプリルフールという行事を使ったウソだったのだ。
それにまんまと騙されてしまったヤマトの怒りは簡単に納まる事はなく・・・-
「っ俺は本っ気で考えたんだからな!!俺の思考力返せっ!!」
「ぇえ~?無理いうなよ~」
ヤマトは怒りのあまりそんな妙な事を言い出してしまう始末。一発殴ってやろうかと拳を作ってみたが、一瞬止まってすぐにそれを解いて太一に背を向ける。


太一のウソを見抜けず彼を喜ばせる答えを出してしまった。
その事実が悔しくて恥ずかしくて・・・そんな感情が混ざりあった今、ヤマトの顔が赤い。
はぁとため息をついて、もう嫌だと頭を抱えるその時、太一が後ろからヤマトをそっと抱き締めて甘えた声で呟いた。
「ヤマトー?・・・ごめんネ。」
「…ウルサイ」
「やまと~~」
ぷぅっと頬を膨らませてヤマトの肩に顎を乗せる。そんな太一の存在を右肩で感じて意識と視線をそちらにそっと傾けてみた。
抱き締められる力の強さが心地よくて、そしてその力が言葉では素直に伝えられない謝罪を感じさせる。
ヤマトはふぅとため息をついて腕を組む。
「…まぁ今回は、騙された俺がバカだったって事にしてやるよ。」
「サンキュっ。・・・でもヤマト、実は全部が全部ウソってわけじゃ~ないんだせ。」
「え?」
「そのチケット、みてみ?」
先程受け取った少ししわくちゃになったチケットをヤマトは袋から取り出す。
そこにはWC、ワールドカップの文字。

それに驚いて太一へ振り返った瞬間、太一の唇がヤマトの唇に触れた。

いつか今日のウソが実現となる日が来るかもしれない。
今日はその時の為の予行練習。
そういう事にしておこう。





fin



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