PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
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華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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春からスタートしたアニメ「SOUL EATER」にドップリはまってしまい、
まさかのパラレル書いちゃいました。もちろんフェ風ですv
ただ、私も魂食はまだ初心者で、設定とかちゃんと把握していない所が多々あります。
魂食のパラレルというより、なんかAラジンとかJャンヌとか、いろーんな作品が混じったオリジナルな捏造SSって感じなので「バカだなぁ」と思ってもらえれば本望ですよ(苦笑)
魂食の世界観は公式サイトもしくはwikiなどで見て下さい。(すみません…投げて;)
でも書いてて超楽しかったです!多分続かないと思いますが(コラ)
後書き的な事は後ほど日記にてv
一応、wikiにある原作のあらすじ部分を載せさせて頂きます。
■あらすじ■
舞台は死神武器職人専門学校、通称『死武専』。
ここに通う「職人」のマカと「武器」のソウル=イーターを軸として物語を展開していく。
この学校は、「職人」と「武器」を育成することを目的としており「職人」と「武器」でペアとなって活動をしていく。その最終目標は悪人の魂99個と魔女の魂1個を「武器」に集める事によって、死神様(死武専の創設者)の下に仕える「デスサイズ」という者を作り出すことである。
それでは、興味のある方は続きへどうぞ。
まさかのパラレル書いちゃいました。もちろんフェ風ですv
ただ、私も魂食はまだ初心者で、設定とかちゃんと把握していない所が多々あります。
魂食のパラレルというより、なんかAラジンとかJャンヌとか、いろーんな作品が混じったオリジナルな捏造SSって感じなので「バカだなぁ」と思ってもらえれば本望ですよ(苦笑)
魂食の世界観は公式サイトもしくはwikiなどで見て下さい。(すみません…投げて;)
でも書いてて超楽しかったです!多分続かないと思いますが(コラ)
後書き的な事は後ほど日記にてv
一応、wikiにある原作のあらすじ部分を載せさせて頂きます。
■あらすじ■
舞台は死神武器職人専門学校、通称『死武専』。
ここに通う「職人」のマカと「武器」のソウル=イーターを軸として物語を展開していく。
この学校は、「職人」と「武器」を育成することを目的としており「職人」と「武器」でペアとなって活動をしていく。その最終目標は悪人の魂99個と魔女の魂1個を「武器」に集める事によって、死神様(死武専の創設者)の下に仕える「デスサイズ」という者を作り出すことである。
それでは、興味のある方は続きへどうぞ。
===========
健全なる魂は
健全なる肉体と
健全なる精神に宿る。
『スラム街には決して行ってはいけませんよ。』
『はい、お母様。』
幼い頃、母と交わした約束は一度も忘れたことなかった。
あの時までは…
嵐のようなヒト ~by SOULEATER~
ビュっとカゼを切る音。
そしてズシュッと何かを貫く音がして、薄気味悪い呻き声が鳴く。
しばらくして貫いた肉体は砂の様に消え、残った霊魂が行き場所がない子供の様にその場で浮遊していた。
細くしなやかな手がその光体を掴むと、自分の腰にぶら下がった袋の中へとそっと忍ばせ、ほっとした面持ちで小さく息をついた。
死神武器職人専門学校―通称死武専。
今年入学した鳳凰寺風は初めての課外授業を受けていた。
「風ちゃん!」
「風!」
名を呼ばれ、風はそちらへ振り向いた。足音静かに近付いてくる二人の女性。風の友人だ。
「どう?終わった?」水色の長い髪がトレードマークの海が言った。
「ええ。光さんと海さんは終わりましたか?」
「うん!」3人の中で最も身長の低い赤髪の少女が頷いた。
「じゃ、少し早いけど帰りましょうか」
風は頷いて愛弓を片手に持ったまま、2人の一歩後ろについて歩いた。
新入生の職人と武器達には、まだパートナーがいない。
だから今回の授業は個々の能力を測るためのもので、生徒は決められた数の邪悪な魂を集める事が合格基準だ。
そして成績を元に、魂の合う職人と武器を教師陣が割り当てる。
二人の魂が共鳴すればパートナー成立、合わなければ解散し、独自に探す。といった流れになっていた。
「他のみんなはどうなのかな?」
「案外私達が一番早かったりだったりして。ねぇ風。…風?」
学校へ向かう帰り道。そう言って海が振り返ると、少し離れた所で風が後ろを向いて立ち止まっている。
「風ちゃん、どしたの?忘れ物?」
「いえ…ただ…先ほどから誰かに見られているような気がして…」
「やめてよ風、只でさえ今夜は暗くて薄気味悪いんだから!3人一緒なんだし、早く学校に戻りましょう!」
「ええ…」
風はもう一度辺りを見回した後、空を見上げた。
ふと目が合った人面月が歯をむき出し、不気味に笑っている。
その様子に一瞬眉を潜めながらも風は軽く会釈をした後、背を向けた。
―その時
「ププゥっ!」
「きゃっ!!」
突然前に飛び出してきた生物に驚き、風は尻餅をついた。
長い耳に似つかわしくない短い手足。ウサギ…?いや、ウサギにしては寸胴すぎるし、何より額の赤い宝石が一般的な動物でない事を示している。
-まさか邪悪な魂…?
魂の形質を見ようと試みるが、それよりも早くその生物はピョンピョン跳ねながら街の奥へ逃げた。
「光さん、海さん、先に戻ってください。私は後から参りますわ。」
「え、ちょっと風!」
そう言うと返事も聞かずに突然街中へ走って行ってしまった風。
背後で起きていた状況を見ていなかった光と海は、訳が分からず顔を見合わせた。
風は何度も何度も街の角を曲がり、一度も振り返る事のない白く小さな後ろ姿が視界から消えてはまた現れ消えては現れを繰り返す。
次第に風の息は切れ、走る速度も落ち始め、ついに姿を見失ってしまった。
そうしていつの間にか迷い込んでしまったのである。
亡き母と決して入らないと約束をしたスラム街に…。
辺りは一段と薄暗く、空気が重い。
古い建物が隙間なく並び、塗装は剥がれてまだら模様になった壁が暗闇に浮かぶ。上を見上げると建物同士に何かのコードが意味もなく架け渡してあった。
中心街の明るい雰囲気などまるでない。寂れた街の独特な匂いが風をさらに不安にさせた。
とりあえず現在地を確認しなくては、
風は当たりを見回すと、古いビルの側壁に今にも崩れそうな外階段を見つけた。
恐る恐る階段を上る。ギシギシと不調和音が終わると、鍵の壊れた柵状の扉を押して屋上に出た。
5階くらいの高さだろうか。風は街がよく見渡せる方へ歩き、腰ほどの高さの柵に手をかけた。
こんな時間に外にいたのは初めてだった。遠くに見える中心街の光。そのさらに奥の空はうっすら明るくなりだしていた。
今はまだ未熟者でも、いつかは武器をデスサイズに作り上げ、死神様と共にこの世界を鬼神から守る。そう決意したその時-
「そこの柵、もたれかかると壊れるぞ。」
「!!」
突然の声にハッとして振り返る風。
差ほど広さのない殺風景な屋上の自分と対角となるその位置に声の主は立っていた。
隣の建物で影になっていて表情は伺えない。ただ、こちらに体を向けているのだけは確認できた。
風は矢を抜き、腰の前で左手にあった弓に矢を当て構える。そのまま前に構えればいつでも攻撃出来る状態だ。
その様子に正面の人物はまあ待て、両手を上げた。
「おいおい、そんな物騒なモン、一般人に向けていいのか?」
「あなたが一般人だと言う確信がありません。」
「あーなるほど。確かに。」
現にその人物は風に『一般人』という固有名詞を使った。
その時点で自分がすでに死武専の関係者だと知られている事になる。
「けどな、悪いがココはオレんちだ。勝手に入って来られて武器を向けられるとは、理不尽にもほどがあるぜ。」
「え?あなたの…家…?」
「そ。見てくれと作りは悪いが、デカくていい住処だろう。」
どうやらこの建物全体の事を言っているらしい。
そうなると悪いのは風の方になる。
彼―口調や姿からして男性だと判断した―は、ただ丸腰で住居侵入者を迎え撃っている事になる。
風は焦って臨戦態勢を解き、頭を下げた。
「そ、それは大変失礼しました!実はある生物を追っていたところ、迷ってしまって、帰る為の道を探していたんです。」
「ある生物?」
「帰り道を確認次第、すぐに出て行きますので…」そう言ってから風は意識を再度中心街の方に向けた。
目的地を確認し、すぐさま登ってきた階段へ足を向けると、いつの間にか、その人物は階段の前に立っていた。
先程まで闇に隠れていた姿が闇に慣れた視覚で感じ取れる程の距離である。カジュアルな装いで髪は緑色。その後ろ髪は白く長い紐で一つに縛っている。
目を覆っていた前髪の奥で琥珀色の瞳がこちらを見つめた。あまりに強い視線に風は小さな恐怖を感じ、身体が強ばる。
「なん…ですか?」
「その生物って、…コイツか?」
「プゥ。」
「!!」
鳴き声と同時に彼の肩に飛び乗ったものは先程風が見失った白い生き物だ。人差し指でその生き物の喉元を突いた後、風を見てニッと笑う青年。
「コイツを追ってここまで来たんだろ?」
「なぜ…それを…」
「で、こんな危険なスラム街に入ったと。」
「まさか、すべてあなたが!?」
「さあ。どうだろうな。」
-迂闊だった。
住居侵入という事実に焦ったばかりに自分は相手の正体を暴けず、まんまと罠に嵌ってしまったのだ。
息を呑み動けないでいる風の様子に彼はくくっと笑った。そして、モコナと肩の生物の名を呼ぶと、モコナはピョンと飛び降り、どこかへ行ってしまう。
「っ…」
攻撃は出来ない。至近距離では弓矢はただのガラクタだ。
仕方なく風は矢を戻し、相手を睨みつけた。
「…目的はなんですか。」
「そんなにに怖い顔しなくてもいいだろ?別に取って喰ったりしないからさ。」
今は、な。と青年は自分の口元に人差し指を当てた。カッとなる風。
屈辱。こんな場所に追いつめられ、女というだけでそういう考え方をされるこの状況を表すのにぴったりな感情だ。
反論しようと息を吸い、口を開いた瞬間、予想もしない言葉に耳を疑った。
「俺をデスサイズにしてほしい。」
-デスサイズ。
それは私達職人の最終目的だ。99個の邪悪な魂と1個を魔女の魂を武器に集める事で、その武器はデスサイズと名を変える。そして死神様の武器となり、鬼神と呼ばれる邪悪な存在からこの世界を守る。それになりたい、と彼は言っているのだ。
「あ…なたは…武器?」
「ああ。だからお前の力で俺をデスサイズにしてくれ。」
「な、何を勝手な事を。あなたは死武専の生徒ではないのでしょう?」
「そうだな。」
「でしたらまず正式に入学されてから、パートナーを探すべきです。それになぜ私が初対面の方とパートナーにならなくてはいけないのですか?理解出来ませんわ。」
「理由…か。言えばパートナーになってくれるのか?」
「そうですね、ない時よりは考えて…―」風は投げやりにそう言いかけると、突然強い力に体を引かれた。
同時に朝日が顔を出し、二人を照らす。
重なる影は屋上の地面に長くのびた。
「これ以上の理由が必要か?」
「っ…!!」
目の前にある顔に風は反射的に右手を振り上げる。おっと、と青年は後ろに避け、二人の間には元通りの距離が出来る。
突然の出来事に風は口元を手で押さえ、力無い潤んだ瞳で相手を睨みつけた。
「あ、あなたはっ、いいいま何をっ…―」
耳まで真っ赤な風の様子に、彼は優しく笑うと屋上を囲っている柵の上に飛び乗った。
「オレはフェリオ。ヨロシクな、パートナー☆」
人差し指と中指で、ちゅっと投げキッスをするとフェリオは空へ跳んだ。
「!!」
-ここは5階…!
風は驚いて柵に駆け寄ると、フェリオはこのビルより低い隣の建物の屋上にいた。肩には先程のモコナも乗っている。
怪我がない様子にほっと胸をなで下ろす風。しかしすぐに風はハッとして大声で叫んだ。
「パ、パートナーなんてなりませんーっ!!」
その声にフェリオはただニコニコと笑って後ろ手に手を振り、姿を消してしまった。
風は柵に手をかけたまま、その場にしゃがみ込む。
足に力が入らない。思考が停止している。
「あの人は………一体…」
嵐のように突然現れ去った青年フェリオ。
その通り道に残した跡はあまりに衝撃的で風は再度口元を押さえた。
触れた唇。そこから血液が全身を巡るかの様な感覚にただ戸惑っている。
初めての課外授業は風にとって一生忘れられない授業となった。
終
健全なる魂は
健全なる肉体と
健全なる精神に宿る。
『スラム街には決して行ってはいけませんよ。』
『はい、お母様。』
幼い頃、母と交わした約束は一度も忘れたことなかった。
あの時までは…
嵐のようなヒト ~by SOULEATER~
ビュっとカゼを切る音。
そしてズシュッと何かを貫く音がして、薄気味悪い呻き声が鳴く。
しばらくして貫いた肉体は砂の様に消え、残った霊魂が行き場所がない子供の様にその場で浮遊していた。
細くしなやかな手がその光体を掴むと、自分の腰にぶら下がった袋の中へとそっと忍ばせ、ほっとした面持ちで小さく息をついた。
死神武器職人専門学校―通称死武専。
今年入学した鳳凰寺風は初めての課外授業を受けていた。
「風ちゃん!」
「風!」
名を呼ばれ、風はそちらへ振り向いた。足音静かに近付いてくる二人の女性。風の友人だ。
「どう?終わった?」水色の長い髪がトレードマークの海が言った。
「ええ。光さんと海さんは終わりましたか?」
「うん!」3人の中で最も身長の低い赤髪の少女が頷いた。
「じゃ、少し早いけど帰りましょうか」
風は頷いて愛弓を片手に持ったまま、2人の一歩後ろについて歩いた。
新入生の職人と武器達には、まだパートナーがいない。
だから今回の授業は個々の能力を測るためのもので、生徒は決められた数の邪悪な魂を集める事が合格基準だ。
そして成績を元に、魂の合う職人と武器を教師陣が割り当てる。
二人の魂が共鳴すればパートナー成立、合わなければ解散し、独自に探す。といった流れになっていた。
「他のみんなはどうなのかな?」
「案外私達が一番早かったりだったりして。ねぇ風。…風?」
学校へ向かう帰り道。そう言って海が振り返ると、少し離れた所で風が後ろを向いて立ち止まっている。
「風ちゃん、どしたの?忘れ物?」
「いえ…ただ…先ほどから誰かに見られているような気がして…」
「やめてよ風、只でさえ今夜は暗くて薄気味悪いんだから!3人一緒なんだし、早く学校に戻りましょう!」
「ええ…」
風はもう一度辺りを見回した後、空を見上げた。
ふと目が合った人面月が歯をむき出し、不気味に笑っている。
その様子に一瞬眉を潜めながらも風は軽く会釈をした後、背を向けた。
―その時
「ププゥっ!」
「きゃっ!!」
突然前に飛び出してきた生物に驚き、風は尻餅をついた。
長い耳に似つかわしくない短い手足。ウサギ…?いや、ウサギにしては寸胴すぎるし、何より額の赤い宝石が一般的な動物でない事を示している。
-まさか邪悪な魂…?
魂の形質を見ようと試みるが、それよりも早くその生物はピョンピョン跳ねながら街の奥へ逃げた。
「光さん、海さん、先に戻ってください。私は後から参りますわ。」
「え、ちょっと風!」
そう言うと返事も聞かずに突然街中へ走って行ってしまった風。
背後で起きていた状況を見ていなかった光と海は、訳が分からず顔を見合わせた。
風は何度も何度も街の角を曲がり、一度も振り返る事のない白く小さな後ろ姿が視界から消えてはまた現れ消えては現れを繰り返す。
次第に風の息は切れ、走る速度も落ち始め、ついに姿を見失ってしまった。
そうしていつの間にか迷い込んでしまったのである。
亡き母と決して入らないと約束をしたスラム街に…。
辺りは一段と薄暗く、空気が重い。
古い建物が隙間なく並び、塗装は剥がれてまだら模様になった壁が暗闇に浮かぶ。上を見上げると建物同士に何かのコードが意味もなく架け渡してあった。
中心街の明るい雰囲気などまるでない。寂れた街の独特な匂いが風をさらに不安にさせた。
とりあえず現在地を確認しなくては、
風は当たりを見回すと、古いビルの側壁に今にも崩れそうな外階段を見つけた。
恐る恐る階段を上る。ギシギシと不調和音が終わると、鍵の壊れた柵状の扉を押して屋上に出た。
5階くらいの高さだろうか。風は街がよく見渡せる方へ歩き、腰ほどの高さの柵に手をかけた。
こんな時間に外にいたのは初めてだった。遠くに見える中心街の光。そのさらに奥の空はうっすら明るくなりだしていた。
今はまだ未熟者でも、いつかは武器をデスサイズに作り上げ、死神様と共にこの世界を鬼神から守る。そう決意したその時-
「そこの柵、もたれかかると壊れるぞ。」
「!!」
突然の声にハッとして振り返る風。
差ほど広さのない殺風景な屋上の自分と対角となるその位置に声の主は立っていた。
隣の建物で影になっていて表情は伺えない。ただ、こちらに体を向けているのだけは確認できた。
風は矢を抜き、腰の前で左手にあった弓に矢を当て構える。そのまま前に構えればいつでも攻撃出来る状態だ。
その様子に正面の人物はまあ待て、両手を上げた。
「おいおい、そんな物騒なモン、一般人に向けていいのか?」
「あなたが一般人だと言う確信がありません。」
「あーなるほど。確かに。」
現にその人物は風に『一般人』という固有名詞を使った。
その時点で自分がすでに死武専の関係者だと知られている事になる。
「けどな、悪いがココはオレんちだ。勝手に入って来られて武器を向けられるとは、理不尽にもほどがあるぜ。」
「え?あなたの…家…?」
「そ。見てくれと作りは悪いが、デカくていい住処だろう。」
どうやらこの建物全体の事を言っているらしい。
そうなると悪いのは風の方になる。
彼―口調や姿からして男性だと判断した―は、ただ丸腰で住居侵入者を迎え撃っている事になる。
風は焦って臨戦態勢を解き、頭を下げた。
「そ、それは大変失礼しました!実はある生物を追っていたところ、迷ってしまって、帰る為の道を探していたんです。」
「ある生物?」
「帰り道を確認次第、すぐに出て行きますので…」そう言ってから風は意識を再度中心街の方に向けた。
目的地を確認し、すぐさま登ってきた階段へ足を向けると、いつの間にか、その人物は階段の前に立っていた。
先程まで闇に隠れていた姿が闇に慣れた視覚で感じ取れる程の距離である。カジュアルな装いで髪は緑色。その後ろ髪は白く長い紐で一つに縛っている。
目を覆っていた前髪の奥で琥珀色の瞳がこちらを見つめた。あまりに強い視線に風は小さな恐怖を感じ、身体が強ばる。
「なん…ですか?」
「その生物って、…コイツか?」
「プゥ。」
「!!」
鳴き声と同時に彼の肩に飛び乗ったものは先程風が見失った白い生き物だ。人差し指でその生き物の喉元を突いた後、風を見てニッと笑う青年。
「コイツを追ってここまで来たんだろ?」
「なぜ…それを…」
「で、こんな危険なスラム街に入ったと。」
「まさか、すべてあなたが!?」
「さあ。どうだろうな。」
-迂闊だった。
住居侵入という事実に焦ったばかりに自分は相手の正体を暴けず、まんまと罠に嵌ってしまったのだ。
息を呑み動けないでいる風の様子に彼はくくっと笑った。そして、モコナと肩の生物の名を呼ぶと、モコナはピョンと飛び降り、どこかへ行ってしまう。
「っ…」
攻撃は出来ない。至近距離では弓矢はただのガラクタだ。
仕方なく風は矢を戻し、相手を睨みつけた。
「…目的はなんですか。」
「そんなにに怖い顔しなくてもいいだろ?別に取って喰ったりしないからさ。」
今は、な。と青年は自分の口元に人差し指を当てた。カッとなる風。
屈辱。こんな場所に追いつめられ、女というだけでそういう考え方をされるこの状況を表すのにぴったりな感情だ。
反論しようと息を吸い、口を開いた瞬間、予想もしない言葉に耳を疑った。
「俺をデスサイズにしてほしい。」
-デスサイズ。
それは私達職人の最終目的だ。99個の邪悪な魂と1個を魔女の魂を武器に集める事で、その武器はデスサイズと名を変える。そして死神様の武器となり、鬼神と呼ばれる邪悪な存在からこの世界を守る。それになりたい、と彼は言っているのだ。
「あ…なたは…武器?」
「ああ。だからお前の力で俺をデスサイズにしてくれ。」
「な、何を勝手な事を。あなたは死武専の生徒ではないのでしょう?」
「そうだな。」
「でしたらまず正式に入学されてから、パートナーを探すべきです。それになぜ私が初対面の方とパートナーにならなくてはいけないのですか?理解出来ませんわ。」
「理由…か。言えばパートナーになってくれるのか?」
「そうですね、ない時よりは考えて…―」風は投げやりにそう言いかけると、突然強い力に体を引かれた。
同時に朝日が顔を出し、二人を照らす。
重なる影は屋上の地面に長くのびた。
「これ以上の理由が必要か?」
「っ…!!」
目の前にある顔に風は反射的に右手を振り上げる。おっと、と青年は後ろに避け、二人の間には元通りの距離が出来る。
突然の出来事に風は口元を手で押さえ、力無い潤んだ瞳で相手を睨みつけた。
「あ、あなたはっ、いいいま何をっ…―」
耳まで真っ赤な風の様子に、彼は優しく笑うと屋上を囲っている柵の上に飛び乗った。
「オレはフェリオ。ヨロシクな、パートナー☆」
人差し指と中指で、ちゅっと投げキッスをするとフェリオは空へ跳んだ。
「!!」
-ここは5階…!
風は驚いて柵に駆け寄ると、フェリオはこのビルより低い隣の建物の屋上にいた。肩には先程のモコナも乗っている。
怪我がない様子にほっと胸をなで下ろす風。しかしすぐに風はハッとして大声で叫んだ。
「パ、パートナーなんてなりませんーっ!!」
その声にフェリオはただニコニコと笑って後ろ手に手を振り、姿を消してしまった。
風は柵に手をかけたまま、その場にしゃがみ込む。
足に力が入らない。思考が停止している。
「あの人は………一体…」
嵐のように突然現れ去った青年フェリオ。
その通り道に残した跡はあまりに衝撃的で風は再度口元を押さえた。
触れた唇。そこから血液が全身を巡るかの様な感覚にただ戸惑っている。
初めての課外授業は風にとって一生忘れられない授業となった。
終
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