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プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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その声は天まで響く1の続きです。
2、
「それは…一体どういう事ですか?」
「君に助けて欲しいんだ。」
「…助ける?」
久しく聞かなかった救いの言葉に風は口をぎゅっと紡ぐ。
テツは風のそんな表情に気づいて立ち上がると、優しくふっと笑い、指先で風の頬に触れた。
「…そんな怖い顔しないで…」
-しかし、テツの手は引いてもいないのに、風の肌に触れる感覚から消えた。
フウを見つめる顔の位置をそのままに、無言で目線を上げると、風の肩を後ろから引いたフェリオの姿を捉えた。
「俺達の質問に答えろ。」
冷静に問うフェリオの瞳はテツを睨んで放さない。
-男の勘…てヤツだろうか。
フェリオの中の何かが、テツを『敵』だと感じている。
テツは小さくため息をついて、宙に浮いたその手を自分の腰に置いた。
「ああ、そうでしたね。『王子様』」
「お前っ―」
「フェリオ、落ち着いて下さい。」
フェリオはテツの自分の呼び名に明らかに敵意を感じて、一歩前に出るが、風の言葉に制された。
「だが…」
「大丈夫です。」
風は肩にあるフェリオの手に自分の手を重ね、振り返ってフェリオを見ると、にっこりと笑った。それからテツを見て、言った。
「…テツさん、詳しく聞かせて下さいますか?」
奴は奏師(そうし)だった。
背負っていたそれは『パスピエ』という弦楽器で、これを使い、音楽を奏で旅をしているのだという。フウにいわせると、楽器の形も音も地球にあるギターという楽器に似ているらしい。
「…綺麗な音色ですね。」
「ありがとう。でも君の歌の方がもっと美しいよ。」
「ふふっ。そんな事ないですわ。」
「……」
そんなテツのフウを褒める言葉にも、照れて笑うフウにも苛立ちながらフェリオは王子という手前、じっと我慢してテツの話を聞いた。
「故郷であるこの村には時々帰ってくる。…1年振りかな。ホント、のどかで何もない村だけど、俺の大切な村。」
小高いこの丘から村の方角を優しく見つめるテツ。けれどすぐに視線を戻して、むしろ俯いた。
「…だけど、今回は魔物の被害がかなり酷い。」
視察して目にした荒らされた畑、壊された貯蔵庫。平和になったとはいえ、僅かな魔物は存在し、彼らも生き抜くために食物を確保する行動は本能ゆえ。特にこの村は都心部から離れている為、魔物の標的にされやすかった。
「だから俺は『奏師』としてこの村を救いたいんだ。」
顔をあげたテツの瞳は、もちろん正面にいる風に真っ直ぐ向けられている。
それは先程までとは比べ物にならないくらい、とても真剣なものだった。
「テツさん…」
テツの名を呟くフウの声に、フェリオは、はっとした。
フウの優しく相手を慈しむ声。テツの真剣な瞳にフウは捕まってしまったようだ。
フェリオは慌ててフウの前に出て、言った。
「話はわかった。王子として、警備兵の増員と魔物退治を約束しよう。正式な文書は、後ほど…-」
「この村からは、もう既に怪我人が出ています。そんな悠著な事言ってらんないじゃないですか?それに、どうやってその魔物を探すつもりで?手当たり次第退治して、なんて、キリが無い。」
なんとも的確で憎たらしいテツの問いかけに、このっ…、と苛立ちの声を漏らすが、フェリオより先に、フウが声を上げた。
「そこまで言うのでしたら、テツさんには何か秘策でもあるのですか?」
「ある。」
間を空けずに頷いたテツに、え?と風は目を丸くした。
それからテツはニッと笑ってその場に座ると、瞳を閉じて深呼吸したのち、再度『パスピエ』を弾き始めたのだ。
♪♪♪
さきほどよりも明るくてテンポの速い曲。
華やかなその音楽がこの場所を包む。
すると、丘に咲く草花がサヤサヤと動き出した。風が吹いているのかと思う様なその動きが除々に変化していく。
次第にその体を一定の早さで左右に揺らす花達は、ついにテツの音楽とテンポが一致したのだ。
その光景にその場にいる二人は驚き、息を飲んだ。
「花が……踊っている…」
「これは……―魔法か!」
花が踊る。
それは花が操られているという事。
通常、植物に意識はない。だから語りかけて来る事もなければ、随意的に動く事など有りはしない。意識のないものを操る事がどれ程の高等技術であるか、二人はとても良く知っていた。
それは最高位の幻惑師、カルディナでもそう簡単に出来る技ではないのだから…。
「これでその魔物をおびき出す。」
テツの言葉と同時に旋律がピタリと止んだ。
それと同時にリズムを刻んでいた花達も、もう既にその身はそよ風に任せている。
その様子に、なるほど、とフェリオは小さく息を吐いて、立ち上がったテツを見た。
「その魔法で魔物を操りおびき出し、退治するってわけか…。」
-ただ漠然と、すごい、と思った。
自分自身、魔法は使えないが、王子として基礎的な知識を身につけている分、テツの魔法の技術はかなり高いと、先ほどの演奏で確信出来た。
しかし、同時に、奏師がこんな戦闘向きの魔法が出来るのかという疑問も上がった。
確か奏師とは元々…-
そんな考えを巡らせてるフェリオの横で、風が小さく拍手をした。
「とても素敵な魔法でした!」
「ありがとう。ただ、この魔法には重要な要素が一つ欠けているんだ。」
「要素?」
「歌、だよ。」
テツはパスピエを傍らに置いて、よっ、と立ち上がり、風の前に立った。
「あの魔法、『幻舞』っていうんだけど、このパスピエだけではその音が聞こえる範囲へ無差別的に効いてしまうんだ。さっきの花達の様にね。
だから多くの魔物からより確実に村を荒らしている奴を絞り込むには、歌が必要ってワケ。君の歌が、ね。」
手のひらを上に向けて、まるでワルツでも誘うようにテツは風を見た。
「私の歌…?」
「駄目だ。」
テツの風を誘う言葉に、本人よりもフェリオが先に断言した。その声の低さに風は振り返る。
「確かにお前のその魔法があればその魔物は簡単に捕獲出来るかもしれないが、フウを巻き込むことは許さない。」
「そんな私的な理由でこの村が滅びてもいいというのですか?王子様が聞いて呆れますね。」
「……なんといわれ様と、駄目なものは駄目だ。」
「っ…-」
普段は振りかざすことのない権限を掲げ、テツを見下ろすフェリオと、平然を装いながらも唇を噛みしめ、フェリオを睨み付けるテツはまさに一触即発の状況だった。
どちらかが手を上げてしまうかもしれない、そんな時-
「お二人とも、落ち着いてください。」
風の鋭い声に二人は視線を向けた。
風は真剣な眼差しでフェリオとテツを交互に見て、それからそっと微笑んだ。
「テツさん。そのお話、お受けいたしますわ。」
風の答えに、フェリオは驚いて言葉を失った。
3へ続く
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