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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
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華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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2007年クリスマス企画 『S4』レイアース第六弾です。
フェ風パラレル「月夜に舞い降りた天使」の続編になります。
こちらをご覧になってから読まれる事をお勧めします。

レイアース第五弾の続きとなっています。全然甘くない。単独フウちゃん語りです。
当初よりだいぶ長くなってしまいました。だって書きたい事が多すぎて…。某ゲームの影響を受けまくっています(爆)


6.寒いのは冬のせい







私は何をしているんだろう…

フェリオの家を飛び出して数分、クロは走る速度を次第に緩め、とぼとぼと歩き出した。
見上げると広がる満点の星空。月は見つからない。

しばらくすると公園とも言い難いほど狭くて暗い広場を見つけ、二人掛けのベンチに飛び乗り座った。


―寒い…


いくら毛皮があるとはいえ、今は冬が苦手な猫の姿。寒さは痛いほど感じる。
クロは体を丸めてベンチに伏せた。



『嫌いです。』


―…なぜあんなに酷い事を言ってしまったのだろう。


ただ、フェリオが自分の事で嘘をつく姿が、とても苦しかった。
悪気がないのはわかっている。ただその嘘が、今ここにいる『フウ』という存在を、何か煩わしい物だと言っているかの様に感じてしまったから。

けれど今、本当にフウの頭の中で迷走していたのはまた別の疑問に対してだった。


-……なぜ、感情を言葉にしてしまったのだろう。


今までの経験上、自分は我慢強い性格だと思っていた。
フウの家はセフィーロ国ではたいした地位の家系ではなかったが、ある時フウの才能が認められ、イーグル王の側近を勤める事になった。
就任時は重臣達からの嫌がらせが多く、暴力すらなかったものの精神的苦痛を虐げられていた。女性だった事も原因の一つだったのだろう。
それでも弱音一つ吐かず黙々と仕事をこなし、常に柔和な雰囲気を醸し出すフウの姿に彼らもフウを認め始め、ついには后の有力候補者と噂がたつほどにまでなった。

后候補という事は、王を男性としてみる事になる。そしてそれは男女の関係を期待されているのだ。
王に対する忠誠心はあったが、残念ながらフウの感情はそれ止まり。イーグル王は上司以上でも以下でもない。
だからそんな噂に時折不快感を持ったが、フウはひたすら我慢し、冷やかす者とも穏和に接していた。

そんな自分自身に呆れる所もあったが、フウにとって城での職務は性に合っていた。
だからいつの間にか感情を押し殺す事をそれほど苦痛だと感じなくなっていた。

しかし、地球に来てからどうだろう。
天職とも感じていた仕事を捨てて、ただの調査員としての地位まで降格され、それでも望んだ地球での生活。
フェリオと衣食住を共にするようになってから、今までは抑えられていた感情が驚くほど簡単に現れだした。

嬉しい時には笑って、驚いた時には声まで上げる。胸が高鳴れば顔は赤くなる。そして先刻の様に悲しい時は一瞬で視界が涙でぼやけた。

その全ての感情に共通するヒト。

-…フェリオさん

幸福という薄いヴェールに包まれた不安感が『嫌い』という言葉を作って外へ突きだしたのだ。

-っ怖い…
フウは自分自身の感情を操作できない恐怖心で今にも押しつぶされそうになっていた。






「こんな所でどうしたの?」
頭上で声がした。重い頭を持ち上げて視線を向けると、そこには赤いマフラーをつけた女性がビニールの袋を片手にこちらを見ていた。

「あれ?あなた…会うのは初めて…じゃないよね?」
彼女はクロの姿をしたフウの深緑の瞳を見つめて、うーんと腕を組んで考える。そしてすぐに、あ、と晴れやかな顔になった。
「フェリオが連れてきたコだ!」

―フェリオさんが…連れてきた?

「もう足のケガは大丈夫みたいだね。」にっこり笑う赤髪の彼女の言葉に、クロは思い出した。



『おい、大丈夫か!?』

あの雨の日。フェリオはクロを動物病院に連れて行ったあの日だ。

『光!』
『フェリオ!?どうしたんだ、そんなにびしょ濡れで…―』
『コイツを診てやってくれないか、ケガしてるんだ。』
『わ、わかった。とにかく中に入って……――』



―あの時の獣医…さん。

「あ、覚えていてくれたみたいだね。私は光。獅童光。」

― !
フウは鳴いてもいないのに自分の考えが伝わった事に驚いた。
いや、鳴いたとしても言葉など通じない。
そういえば以前、まだクロとしてフェリオの家で生活していた時、フェリオが光について話した内容を思い出した。

『光は動物の考えを感じ取れるらしいんだ。だから俺達と対して歳変わらないのに獣医師になった。お前も麻酔が効いてなきゃ何か話せていたかもな。』


動物の考えを感じ取れる力。
地球に魔法は存在しない。となると彼女だけの感覚。…第六感。

「あれ?フェリオは一緒じゃないのか?…もしかして家出?」
単刀直入な質問にフウは痛いところを突かれ、少し動揺した。
そんなクロの様子に、光はにっこり笑って「そっか。」と小さく言うと
、ビニール袋をクロの隣に置き、自分は敢えてクロの目の前にしゃがんだ。
「仲がいいんだね。」

―え?

「私も小さい頃、よくヒカリと喧嘩してたよ。あ、ヒカリっていうのはウチにいる犬なんだけどね。そんな時に兄様が教えてくれたんだ。『光とヒカリは喧嘩するほど仲が良い』って。最初は意味が良くわからなかったんだけど、それって『喧嘩するほど相手を信用している』って事だよね。信頼しているから言い合える。」
光はそういうと、そっとクロの頭を撫でた。その心地良さがフウの不安を溶かし始める。


感情を言葉にする事は決して悪い事ではない。
面と向かって話し合える相手。それがフウには初めての存在で、経験で。だから少し戸惑っただけなのだ。
そう光の手が「大丈夫だ。」と安心させてくれる。


「うん、毛並みも綺麗だ。あなたは本当にフェリオに大切にされているんだね。」

―…私はどうしたらいいですか。

「きっとすごく心配してる。途中まで一緒に行こうか?」

-いいえ、大丈夫ですわ。

クロは先ほどまでの重かった体が嘘のようにすくっと立ち上がり、光を見つめてから小さく会釈した。それからトン、とベンチを飛び降りて公園の入り口まで行き、振り返ってみる。光がこちらを見ていた。



にゃぉ

「!」
その声に光が笑顔を作った。
光が瞬きをした次の瞬間、クロの姿は公園から消えていた。


「…どういたしまして。」
そう呟くと置いてあったビニール袋を持ち上げて澄んだ空を見上げた。




そこに月はないけれど、代わりに小さな外灯が一つ、暖かな光りを放っていた。










=========
遅くなって本当にすみません。
ようやく3人娘に接点ができて念願叶ったり☆
光が光じゃなくてすみません…。動物に対しての接し方が難し…。
さて、ラストへ続きます。
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