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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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5、25時の密会(レイアース)

















城の中の片隅にある小さな庭。
僕はなんだか眠れなくて、フラフラとそこへたどり着いた。

「涼しい…」
草木の薫りが鼻をくすぐる。
ふと人の気配を感じてそちらに意識を向けると、とても良く知っている後ろ姿を見つけて、驚いて駆け寄った。

「え?…フウ?」

名前を呼ばれて振り返る風のシンプルな緑のワンピースがふわりと広がる。
「まぁ、アスコットさん。こんばんは。どうされたのですか?こんな夜中に。」
小さく小首を傾げて微笑む風に流されまいと僕は胸の前で拳を作って言う。
「それはこっちの台詞だよ!!もしかして一人で来たの!?」
「ええ、光さんも海さんもぐっすり眠っていらしたので…」
「ダメだよ!!女の子なんだから!!」

まじめな顔で怒るアスコットに、風は目を丸くして、それからニッコリと笑った。
「ありがとうございます。実は小鳥が…」
「小鳥?」

風は傍らにある太くて力強く伸びている大樹の幹に手を当てて、空に向かって広がる枝と葉を見上げた。
アスコットもつられて上を見ると、その中の枝でも地上に近いそれに鳥の巣の様な塊を確認した。

「今朝、フェリオとここに来た時、巣から落ちていた小鳥を助けたんです。その子が大丈夫なのかどうか気になってしまって。」
「そうだったんだ。じゃあ僕が確認してくるよ。」

「え!?けれど……」
「大丈夫大丈夫、この前フェリオに昇り方教えてもらったんだ-……うわっ!!」
「!! アスコットさん!!」







かっこわるい…
木に足をかけた途端に滑り落ちるなんて…

「かすり傷でよかったですわ。」

尻餅をついた体勢のまま、アスコットは風の治療をうけた。風の唱えた治癒魔法で膝の傷跡と痛みは、もうない。
「ご、ごめん、フウ…。」
「いいえ、私の為にありがとうございました。」
そう言って優しく微笑むフウにアスコットの胸がドキッと音を立てる。


「あ、あの、フ…―「こんな時間に二人で何してんだ?」
自分に被さる黒い影。アスコットが驚いて見上げたそこにいたのは……

「フェ、フェリオ!!!」

今一番会ってはいけない人物だった。


「こんばんは、フェリオ。」
焦る様子もなく、にっこりとフェリオを見上げる風にフェリオも笑って答えた。
しかしすぐに視線を戻して、冷や汗をかいているアスコットを見下ろす。
「…これは迂闊だったな。お前はフウにも興味があったのか。」
低く問う声にアスコットはより一層恐怖を覚えた。
「ちちちちが、違うよ!!僕はウミが…―」
「フウ、送るから部屋に戻れ。」
「…はい。」
アスコットの反論を遮ると、フェリオは座っている風の手をそっと引く。
「ではアスコットさん、おやすみなさいませ。」
一礼の後、苦笑いをこぼす風に「ごめんなさい」という言葉も隠されている事にアスコットは感じとった。

「お、おおおやすみ!」
吃ったその挨拶をどう思ったのか、フェリオの足が止まり、アスコットを呼んだ。

「アスコット、今日からお前も数にいれておく事にするよ。」
「数?」
「俺の『要注意人物』リストの一人にな。」
意味深くニヤリと笑うと、背を向けて歩き出した。

「えぇっ!!そんなのやだよ!!僕が好きなのは海だけなんだってば~!!」
そんなアスコットの声が庭と城を繋ぐ廊下に響いた。





「くくっ、本当に冗談の通じないやつだ。」
「もう、あれではアスコットさんが可哀想ですわ。」
「こんな遅くにお前といるのが悪い。それにフウもフウだ。まったく…来てみてよかった。」
「フェリオもあの小鳥が気になっていたんですか?」
「……いや」

歩みを止めてフェリオは風と向き合うと、顔を近付けて言った。
「小鳥を気にしているお前が気になってな。」
薄暗い廊下でニッと笑ったフェリオの言葉に風も頬を赤く染めて、くすっと笑う。
「ありがとうございます。」
本当に言葉巧みな方…と思いながら笑い続ける風の姿を見て、これは本気にされていないなと感じ、フェリオは顔の前で手を横に振った。

「冗談じゃないぞ。…その証拠に俺はアスコットに嫉妬したからな。」
「え?」
驚いて見上げる風の頬にフェリオの指先が触れる。

「真夜中にお前と巡り会えるのは俺だけだろ。」

まるで確信であるかの様な彼の言葉と強い眼差しに、風の心がドキッと音を立てた。

「…違う、か?」
物音一つないこの空間に自分達しかいない事実。

彼女の肌や声や笑顔や心に安易に触れる事は俺が許さない。例えそれが友人の一人でも…

廊下を照らす廊灯の炎がフェリオの瞳で妖しく揺れている。
「…フェリオ…」


ゆっくり顔が近付いた。




「はい、そこまでー。」

「うウミ!」
「海さんっ!!」

彼女の声に二人は急いで離れる。

そこには、扉が半分空いてものすごい形相で腕を組んで立っている海がいた。

「~~ちょっと!人の部屋の前で、一体何やってんのよ、貴方達は!」

「わ、悪い…」
「すみません…」
恥ずかしさのあまり風の顔が赤い。

もぅ!と怒りながら海は部屋履きのまま数歩廊下に出ると風の手を引いて部屋の中に入れた。
「女の子がこんな夜中に出歩くなんて、非常識にも程があるわ!!」
「え…あ、はい…」
「あ、おい…―」
伸ばしたフェリオの手は風おろか海をも掠めて宙を掴む。

「それじゃ、お休み~フェリオ♪」
そう言って意地悪な笑顔を浮かべながら、海は扉を閉めた。
後ろで風が苦笑いをして会釈したのが一瞬だけ見える。


廊下に一人取り残されるフェリオ。
海が魅せた鮮かな風の奪取ぶりに、宙に浮いたままだった右手を自分の口元にあてた。


愛しい人との口付けを邪魔をされたはずなのに…今、心は安堵している。

「俺も相当の臆病だな。」

風に顔を近付けた瞬間に、体を走った感覚…

―リセイ ヲ ウシナウ―


フェリオは小さく溜め息をついて廊下の窓に映る自分自身を見つめた。

あの時のフウの目に俺はどう見えたのだろう。
漆黒の闇を彷徨う獣や死人の様な恐ろしい存在だと思わなかっただろうか。


―俺は君に嫌われる事が、何よりも…―


窓に映る自分の顔を手の平でパンパンと叩く。慰めるように、落ち着かせるように。

「アスコットの所に戻るか。」

悪い事をしたと思う。あまりに身勝手な理由で、純粋な彼をからかってしまった。今頃落ち込んでいるに違いない。

こんな複雑な夜には似通った恋をする者同士、語らうのもいいではないか。
―なんて思う自分は、よほど動揺しているな、とフェリオは自嘲の笑みを零した。


来た道を戻る前に一度だけ二人の消えた扉を見る。


(…とりあえず、ウミは『要注意人物』決定、だな。)


この夜、フェリオとアスコットがどんな会話をしたのか、本人達のみぞ知る。





fin
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