PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
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プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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いつも (お題:07.邪魔者現ル)
~07/8/1 10th Anniversary~
~07/8/1 10th Anniversary~
―あ、太一。
「八神先輩!!これ、受け取って下さい!!」
小さなポニーテールを揺らした1年生の女の子が、紙袋を持った手をこれでもか、とばかりに前へ伸ばして太一に差し出している。
「え……ああ、サンキュー。」
太一は彼女の勢いに半ば押されたかのように片手でそれを受け取ると、少女は耳を真っ赤にして元来た道を走って行ってしまった。
「……」
あまりに一瞬の嵐のような出来事に太一は呆然とその場に立ち尽くしている。
「…なんだったんだ?」
「太一が好きなんだろ?」
「!!!」
突然の第三者の声に太一は首が取れるくらいおもいっきり振り返った。
太一が聞き慣れた低音の声の持ち主はニヤニヤ笑っている。
「や…ヤマト……今の…聞いて……」
「さっすが、サッカー部のエース。モテますこ・と♪」
くっくっく、と笑いからかうヤマトに太一はかぁっと赤い顔をして怒鳴った。
「っ知るか!!」
「そんなに怒んなって。俺も別の女子にもらったんだ。ほら。」
胸の前に上げた手には鞄と一緒に紙袋がぶら下がっている。
え?と反応した後、なんだよ、と太一は少しむっとしてヤマトの肩口を拳で小突いた。
「帰ろうぜ」
「今日って1年生、調理実習だったのかぁ?」
「…みたいだな。昼に学校中甘い匂いがすごかったから。」
海を感じる小さな湾岸の高台を太一とヤマトは歩いている。
並んで歩く、いつもの帰り道。風が気持ちいい。
一つ違うのはそれぞれの手にある紙袋の存在。
振動や風でカサカサと鳴る互いのそれが、ひどく耳に障る。
太一は袋を顔の前に上げた。じっと見えない中身を透視しているかのように見つめてぼそっと言った。
「…これ…食えんのか?」
「お前な…失礼だぞ。」
「だってさー、俺明日試合だしー腹こわしたら大変…―」
「太一。」
青い瞳が太一を強く睨んだ。
ヤマトが言わんとしている事を察知した太一は両手を挙げ降参のポーズをして「冗談デス」と苦笑った。
ヤマトは睨むのを止め、ふぅ、とため息を付く。
「…食べられるのか、なんて聞かれたら誰だって腹が立つだろ。俺ならただじゃ済まさな…―」
「言わねえよ。」
「え?」
「好きだし、俺。」
ヤマトの足がピタリと止まり、その少し前で太一が止まった。
しん、とした空気の中に微かに海の匂いが溶け込んで、ヤマトのひじを風が撫でる。
汗で濡れたYシャツ。ガッシリした太一の背中を見つめるヤマト。
―自分の鼓動がうるさい。
「…たい…ち?」
ヤマトは搾り出す様に名前を呼ぶと太一はぐるんと振り返りニカッと笑って一言。
「お前の作るメシな♪」
風が、止まった。
「そりゃぁドウモ。」
はぁとため息をついて、前にいる太一の横を抜いてヤマトは歩き出した。
「あ、待てよヤマト!!」
―何勘違いしてんだ…俺は。
手は雑に頭を掻いて、足は歩みを早め、口からは大きくため息をつく。
安易な言葉にドキリとした自分が恥ずかしい。
―そんな言葉なんか要らないくらい、俺達はすごく近いはずなのに。
「ヤーーマ・トっ!!」
歩みを緩めないヤマトに、太一は幅跳びの要領でガバッと肩に飛びついた。
「っ! たい…―」
「大好きだー!」
耳元で叫ばれ、ヤマトの鼓膜がキンとなる。愛の言葉もこうなればただの騒音でしかない。
「ウルサイ!」
「なんだよー今そう言ってほしかったんだろー?」
「はぁ?誰が、いつ、そんな事言ったんだ?」
「顔に書いてあるっ。」
「お前、一回海に落ちろ。」
じゃれあいながら交わす言葉はいつもと変わらない。
カサ…。
それぞれの手にある紙袋の音も、今はもう気にならなくなっていた。
終
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