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PC閲覧推奨レイアース&デジモン二次創作小説blog。
★ひとこと★
プロフィール
HN:
華乃都(かのと)
年齢:
39
性別:
女性
誕生日:
1985/09/25
職業:
船医
自己紹介:
このサイトは『レイアース』『デジモン』をメインとする二次元小説サイトです。原作や作品の関連団体とは一切関係ありません。
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「たぁっ!」
フェリオの声と共に振り落とされるその刃が魔物の肉を切り裂いた。






雄叫びをあげて魔物はその場に倒れると、まるで地に返っていくかの様に砂へと変わり跡形もない。
よし、とフェリオがそれを確認して後ろを振り返ると、勢いよく自分の前を突風が通過した。
更に続けて魔物の叫び声と地響き。
どぉぉんと倒れた魔物の向こうには、手を前に差し出した状態で女性が一人立っている。
つまり彼女がその魔物を倒したという事。

その姿に、フェリオはヒューと口笛を吹いて駆け寄った。
「腕はまったく鈍ってないじゃないか、フウ。」
「ええ、安心致しましたわ。」
久々の戦闘に不安のあった力が、思うように使いこなせた事に風は安心してニッコリと微笑んだ。
まさかこんな虫をも殺せない様な女が自分の倍以上の大きさの魔物を倒すなんて、普通であれば目を疑う光景であるだろう。
―しかしこれは『魔法騎士』という使命を背負った事で仕方なく身についてしまった物であるのだが・・・。

「フェリオ、腕に傷が・・・」
「え?・・・ああ、ホントだ。気にするな、俺も気付かなかったんだから・・・-」
最後まで言い終わる前に、風はフェリオのその手をとって小さく『癒しの風』と呟くと、暖かい風がわずかに流れた血と傷跡を消し去った。
「駄目ですよ。どんなに小さな傷でも感染したら危険なのですから。」
「・・・そうだな。ありがとう。」
フェリオはぎゅっとその暖かな手を握って引き寄せると、見上げる風の身体に影を被せて、顔を重ねた。

握られた手とは逆にあった風の愛剣が手袋の宝石に戻る。


「・・・フェリオ、出来れば場所を考えてして下さると・・・」
唇が離れた後に頬を紅くしていう風は何とも初々しい。
そんな彼女に笑いかけようと思った瞬間、ふと口元を押さえて風を見つめた。

「・・・血の味がする。」
「え?」
そう言うとフェリオは風のあごを指でそっと上げるとその唇の端に触れて「やっぱり・・・」と小さくため息をついた。
「ここ、切れてるな。」
「さ、先程の戦いの時に切れてしまったんですね。大丈夫ですわ、これくらいの傷・・・-」
彼とのあまりの距離の近さと肌に触れるその感覚に照れて身体を引く風だったが、それよりも早く反応したのはフェリオだった。

自分の唇とは僅かに離れてその傷跡に彼の唇が触れる。
さりげなくこういう行動をとるフェリオに未だ慣れない風は、当然驚いて声を失ってしまった。
避け様にもあごにある指で顔を固定されてしまっているのでそれは叶わず、風はぎゅっと目をつむった。
春の様な風が互いの髪を微かになびかせる度、一方の頬にかかるフェリオの髪がくすぐったい。

「うん、止まったみたいだな。」
「あああなたは吸血鬼ですかっ!?」
フェリオが離れたと同時に出てきた言葉は明らかに風の動揺を表すもの。
そんな聞いた事のない妙な単語に「キュウ・・・ケツキ?」普段と変わらぬ表情で彼が問うのだから、自分だけ戸惑っている様で風には少し癪に感じた。
しかし風は高鳴る鼓動を掌で押さえて一呼吸つくと口を開いた。
「・・・こちらの世界の物語に登場する血が好物な魔物の様な者の事です。」
「へぇ。俺はそんな魔物に例えられたのか。」
はははっと意味深に笑って見せた後、風の前髪をそっとすくい、琥珀色の瞳が真剣なものに変わった。
「俺はフウに傷付いて欲しくないだけだ。・・・例えそれがフウ自身であっても、許さない。」
ドキッと風の心臓が跳ねる。

―なんて自分は愛されているのだろう。
フェリオの想いに満たされて見上げる風の瞳が潤んだ。

「フェリオ・・・」
「お前にとって俺が魔物の様な存在でも、守るよ。」
「違います!そういう意味では・・・-」
自分は知らぬ間にフェリオを負の心で作られた魔物と同じにしまった事に慌てて首を振ると、フェリオはポンと風の頭をなでた。
「わかってる。それほどにお前が大事だって意味なんだ。」
ニッと口角を上げて言うフェリオの顔が風の大好きな少年の様な笑顔である事に風はほっとして、それと同時に嬉しくて、笑顔で答えた。







「ただいま戻りました。」
「おかえりなさい!風ちゃん!」
「もう、遅いわよー。先にお茶会始めちゃうところだったわ。」
「悪い、悪い。」
大き目のテーブルに馴染みの面々が着席していて、その間にフェリオと風はからかわれながらも空いている席に着いた。
剣を自分の椅子に立てかけて座ろうとしてふと顔をあげると、正面に座った風が光と海と楽しそうに話をし始めている。

―トクンと胸が鳴った。
その清楚でしたたかで、なんて優しい横顔。
フェリオはそれにしばらく見とれてはっと我に返った。

「『魔物』、か・・・。」
風が自分の事をそう言った事を思い出してフェリオは呟くと小さく笑った。

彼女は勘違いをしている。
こうして自分の心を惑わせているお前は、誰よりも美しい俺の『魔物』だ。
今まで何度戦いを挑んでも、その笑顔にやられてしまう。
そしてその笑顔が時折俺に力をも与える。
強くも弱くもさせる君はなんて厄介な存在なんだ。

そんなお前に勝つ為には・・・そうだな・・・

― それは多分、俺の中の『魔物』が目覚めた時。 ―

fin



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